拙書の218ページを良く読んで頂きたいのですが、PPIを避けるべき理由はベンゾと代謝酵素が被るからという理由によるものです。PPIは主にCYP2C19という代謝酵素を使います。CYP3A4も関与するといわれています。
ベンゾとPPIが同じ代謝酵素を使うことで、両方を体本来の代謝能力通りには代謝しきれない → 血中濃度が常に上がり気味の状態になる、ということです。
例えばベンゾを継続服用中でPPIはまだ飲んでいない所に、PPIを追加投与してしまうと、ベンゾの血中濃度がいきなり上がってしまう、という問題が生じます(本中にノースカロライナの女性がPPI投与によって過鎮静になってしまった例を紹介している通りです)。
ずっと以前より、PPIとベンゾを長らく併用継続中であり、それにより問題が生じていないのならそのままの併用継続で良いかと思います。
むしろ、今の併用継続中状態でいきなりPPIを止めてしまうと、その分、自身の代謝酵素がベンゾの代謝に集中できることになりますから、いきなりベンゾの血中濃度が下がる事になり、つまり急減薬のような状態になり、問題が生じる可能性があります。
このように、「避けるべき処方薬」については、“なぜ避けるべきなのか?”、そのメカニズムを理解する必要があります。
ちなみに、少し調べてみたのですが、リボトリール・ランドセンの代謝に必要な酵素はCYP3A4及びN-アセチルトランスフェラーゼ2(NAT2)、マイスリーの代謝に必要な酵素はCYP3A4及び一部CYP2C9、CYP1A2ということのようです。
参考:石東病院ホームページ
医療用医薬品 : マイスリー
CYP2C19は、置換先としてよく選ばれるジアゼパムの代謝酵素としてよく知られています。