「離脱症状は脳の回復を促す」というのは直截的で誤解を招く表現です。
脳の鎮静系と興奮系のバランスが、ベンゾ減薬により興奮系優位(時には暴走状態)になることによって現れる「現象」が離脱症状です。
脳はそれに対応しようと、元々あった自然の鎮静系を再び強め戻そうとするかもしれません。
しかし、対応しようとしないかもしれません。
あるいは手に負えないのかもしれません(鎮静系は戻したものの、長期増強されたグルタメート系(興奮系)の暴走が止められない等)。
離脱症状が回復を促すのであれば、重度の離脱症状が5年、10年以上経っても続く人々がいるのが理屈に合いません。
断薬後重篤な離脱症状が22カ月間まったく変化せず続き、自ら命を絶つしかなかったクリスティーンの例を見ても、離脱症状が回復を促してくれてはいません。
以下の研究論文でも、ベンゾ離脱後50週間に渡って被験者を観察した所、4つの離脱症状減衰パターンがあると示されていますが、そのうちの一つは離脱症状の強度が変化なく続くパターンがあるとしています。
研究論文:Vikander B, Koechling UM, Borg S, Tönne U, Hiltunen AJ. “Benzodiazepine tapering: A prospective study”. Nord J Psychiatry 64:273–282. 2010